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オンラインシンポジウム「ワタシの街の、ビジネスの育て方」に登壇しました

2021.09.06

2021年8月30日、オンラインシンポジウム「ワタシの街の、ビジネスの育て方」に寺田が登壇しました。
政や支援セクター、企業家、支援会社などさまざまな立場の40名以上の方々が、北海道を中心に長野や静岡など全国各地から参加しました。

主催したのは、北海道女性起業家支援ネットワーク<ほくじょき.net>の菅原亜都子さん

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ほくじょき.net(北海道女性起業家支援ネットワーク)/じもじょき.netとは

「北海道のどこに住んでいても、女性が起業したいと思ったときに安心して支援を受けられる環境」を目指して構築した、支援機関や女性起業家コミュニティなどによるネットワーク。道内50の機関や団体が参画しています。

さらには広い北海道で「地域の実情に応じたきめ細やかな支援を行いたい」という考えから、各地に女性起業支援を行う地域に根付いたネットワーク「じもじょき.net」(じもじょき.十勝/釧路/函館/とまこまい/あさひかわ/ちとせ/オホーツク)があります。

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寺田のほか、山梨県南アルプス市の「NPO法人bond place」理事の加藤香さんと、愛知県名古屋市の「サスティナブル・ストーリー株式会社」代表取締役の中島康滋さんがご登壇し、それぞれの理念や活動についてお話しされました。

◆はじめに ―菅原さんがこの会を開こうと思ったきっかけ―

菅原さんは5年間に渡り、北海道内の女性起業家支援のネットワーク構築を進めてきました。

これまでは「広い北海道のどこに住んでいても、起業したいと思ったときに安心して支援を受けられる環境づくり」を目指してネットワーク構築を進めてきましたが、昨年度からは少し目線を変えて「広い北海道のどこにいても、当たり前に多様な女性起業家が周りにいる未来」のために、ロールモデルの発掘・育成・発信・支援事例づくりに取り組んでいます

そんな中、「ロールモデルづくりはいいけれど、これまでと同じ価値観でいいのだろうか」と立ち止まった菅原さん。

「女性だから小さな起業でしょ」「スケールする事業でないと公的な支援をする意味がない」という価値観が腑に落ちず、そのための手法にも迷いが生じてきたそうです。

そこで、何かヒントを得ようと各地で女性の起業支援を行う3人に話を聞き、参加者とも一緒に悩み、つながる機会としてこの企画が実現しました。

◆山梨県南アルプス市「NPO法人bond place」理事の加藤香さんのお話
「コレクティブインパクトで実現する、思いやり思考の起業」

「NPO法人bond place」は人と人がつながり、学び合う場作りを目指して、2013年から活動をはじめ、2015年にNPO法人として認定された団体です。

起業促進の活動として、「地域の中に仕事を創りたい」と考える女性を対象にした実践的な起業を応援するプロジェクト「co+shegoto」(コーシゴト)や、経済産業省のセミナーでの事例発表、山梨中央銀行主催「女性のための起業セミナー」で企画・運営・女性起業家支援コンテストで最優秀賞を受賞など、協働やワークショップデザインに関する実績が多数あります。

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◇思いやり志向の起業支援
NPO団体の発足から6年間で見えてきたのは、誰かを思いやる気持ちから始める起業の形「思いやり志向の起業」
身近に対面した相手への共感や、「まもりたい」という気持ちから気づいたら起業していたというケースも。地域や暮らしの中での困りごとを解決したいという「思いやり」が事業に発展するのです。私たちは「なぜ私がそれをやるのか?」「なぜわざわざ起業するのか?」と起業を志望する女性たちの価値観や哲学まで聞き、問題を発見します。時には数か月かけてずっと一緒に考えます。この作業を経て思いを見える化し、後々金融機関や支援機関などのネットワークにつなげます。

◇コレクティブインパクトの実施
行政、企業、NPOなど異なる分野で活動する複数の団体が、責任を持って関わりながら、社会課題解決のために取り組む手法「コレクティブインパクト」
ボンドプレイスは、起業家のコスト管理や利益率など自己流では限界のある経営からの脱却のため、金融機関や支援機関が同じ土俵に立って課題を解決しています。関係者が集まる議論の場には、整然とした会議用テーブルの席はなく、前方も後方もない円の状態にしています。
(写真は新型コロナウイルス感染拡大前に実施した際の様子)

◇共通言語としての「SROI」
それぞれのステークホルダーがイメージできて、それぞれの組織に伝えられる手段を考えたときに、共通言語としての「SROI」が必要だと気づきました。SROIとは社会的投資収益率のこと。社会活動のソーシャルリターンを定量化する考え方で、評価型と予測型があります。コーシゴトが生み出した成果をSROIによって顕在化することで、関係する人たちの理解がさらに高まったと思います。

◇甲府市で開催した女性のための起業等セミナー「Can-Pass」(キャンパス)
「やりたい!」誰かの「できる!」を応援するセミナー「キャンパス」参加者同士での学びを生み出すためのワークショップ形式・少人数でメンターによる伴走支援有り・対話を繰り返してやりたいことの軸を構築するという3つの特徴があります。
参加者はワークして、自分の価値を整理する「まんだらチャート」や、事業の仕組み化のための「3C分析」、事業を整理してどのようにビジネスとして実現するかを考える「ビジネスモデルキャンパス」などに取り組みました。

◆静岡県三島市「株式会社ビズホープ」寺田望の話
「女性のパワーを地域とともに育む広報企画会社」

◇メンタルヘルス・ケアと弱みのシェア
コロナ禍の影響もあり、全国的にメンタルヘルスやメンタルケアへの問題意識が高まっているように感じています。特に、普段誰かの支援をしている人のケアが必要なのではないでしょうか。
今、cotree(コトリー)というオンラインカウンセリングサービスの利用者が増えているそうです。弱みや悩みをさらけ出すことで、腹を割って知恵をシェアし、互いにサポートし合う時期にきていると強く感じます。

◇多種多様な人材が行きかう「コトリスラボマーケティング」
起業家が集うビズホープでは、ニーズがあって初めてチームを組織します。私は、クリエートできる機会をつくって、彼女たちを送り出すような立場です。現在、主にサポートしているのは地元の中小企業。クライアントと私たちの間には、商工会議所や地元の金融機関などの公的機関が入ります。このように第三者が関わることで、安心安全にビジネスが履行できるというメリットがあります。クライアントとは対等な立場で話をします。時には意見がぶつかり合うこともありますが、だからこそ価値観をすり合わせる行動につながり、より良いものが生まれます

◇音声メディアで発信「寺田望のここだけ広報トーク」
好きな場所や時間に気軽に聴ける音声メディア「ポッドキャスト」で、一歩踏み出すゲストと共に広報PRを探求していく番組「寺田望のここだけ広報トーク」を今夏からはじめました。オンラインでの配信は、 遠隔地でも伴走支援が可能であることを実感したからです。現在は体験型コーヒーサービス「コンマラボ・コーヒー」を展開する昨年起業したばかりの江角和沙さんをゲストに、創業時に知っておきたい広報の話を配信しています。

◇ニューノーマル時代の経営 三原則
(1)オンラインでも、顧客との接点づくりが可能な体制を取っておくこと。
(2)身近な人を幸せにするモデルであること。ピンチの時こそ足元を振り返る。
(3)収支計画はなだらかな丘をイメージする。
コロナのせいで、ではなく、コロナのおかげでと言える人こそ、この危機をタフに乗り越えることができます。先が読めない時代ですが、自分なりの正解を一歩一歩手繰り寄せていきましょう。

◆愛知県名古屋市「サスティナブル・ストーリー株式会社」中島康滋さんのお話
「ビジネスを社会と繋げるストーリーに描き直すことで、サスティナブルな事業に変える」

18歳からソーシャルからスタートアップまで、十数社の起業を経験した中島さん。現在はサスティナブル・ストーリー株式会社の代表を務めながら、子育て支援やフェアトレード、若者の人材育成など様々な業種や活動に取り組む7つの団体の企業の経営、運営にかかわっています。

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エシカルジュエリービジネスの第一人者である白木夏子さんの株式会社HASUNAの創業をサポートしたこともあり、起業する女性の考え方に長年触れてきました。自分も起業家なので、起業を支援するときは一緒に経営する側に立ち、その苦労がわかります。
人の困ったことを解決すること、つまり社会課題はどんなことでもビジネスに繫がると思っています。

普段、8歳と11歳の子どもの父親として食事をつくったり一緒にお風呂に入ったりしていると、生活者の目線や考え方に自然となっていきます。
幼稚園や保育園からの急な呼び出しには母親が応じることが多いですが、これが父親に代わることで、世の中はよい方向に変わるのではないかなと感じますね。

◇地域の課題 ―愛知県と名古屋市の場合―
名古屋は実家暮らしが多く、起業がしにくいという土壌があります。たとえば若くして結婚し3人の子どもを育てると結果としてブランクの期間が長くなり、社会復帰がしづらいという人が少なくありません。

「比較的若い世代の女性の数が男性の数より少ない」「就業先不足で女性の県外転出が増えている」「製造業が多く、女性の社長比率が低い」「サービス業などが不足している」などの課題がある愛知県と名古屋市

課題解決に向けて、課題解決に向けて、愛知県から2019年から2021年に「起業家・経営者支援プログラムCOMPASS」を、名古屋市からも同期間に「なごや女性スタートアップ・ラボ」という事業を受託してきました。

◇女性の起業の多くは「ソーシャル」がテーマ
特徴として「生活者視点での課題やSDGsなどの社会課題の解決を目指すものが多い」「夢が実現したイメージを強くもっている」「つながりから事業が生まれて広がるといった『シェア』や『コモン(共通のもの)』という意識がベースになっている」「NPOからソーシャルビジネス、スタートアップまで選べる」などがあります。

男性はひとりで行動する人が多いですが、女性はどんどんつながっていく、そのパワーはすごいと思います。大抵の男性はビジネスプランやアイデアなどをシェアしたがりません。たとえば、お気に入りのお店があっても男性は秘密にし、女性は人に話して情報をシェアするほど行動が違います。

◇女性の起業、この3年間での変化
この3年間で、起業に対する姿勢が大きく変わったように感じています。3年前のマインドが「自分ができることをしよう」だったのが、今年は「社会を変えたい、ビジネスで解決したい」に変化しました。他にも3年前は個人事業で満足する人が大半だったのが、組織化や法人化の数が増えたり、ママサークルや地元コミュニティという限定された商圏だったのが、県外、ひいては東京や日本全体に広がったり、目指す売上感が1000万から最低5000万~1億に、また出資を望む起業家が増えたりなど様々な変化を体感しています。

◇事業を成長させるサイクル
1.想いを醸成する(ビジネスマインドを磨く)
→2.実現可能性を高める(個人をチームに、理想と現実のギャップを埋める)
→3.ビジネスを学ぶ(知恵を集約する)
→4.自己成長の土壌(経営者仲間、メンターと出会う)→1.に戻りサイクルを続ける

過去からではなく、未来をつくっていくビジネスを。ゴールを定め、現状からどんな改善ができるかを考えて、策をつみあげていく考え方である「バックキャスティング」が大切です。

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女性起業支援にまつわるお話のあとは、札幌市で「私らしく働く」ための仕組化コンサルティングなどを行う株式会社ワタラクシア代表の伊藤順子さんや、静岡県三島市からWEBデザイナーの栗田舞子さん、静岡県富士市の工務店、空間工房LOHAS広報の三井佳奈さんたちがそれぞれの感想を話しました。

大正10年に建てられた函館市伝統的建造物のシェアオフィスから参加した、イメージ・コネクト合同会社代表でじもじょき.net函館を運営する金谷貴明さんからは起業相談を聴くのに長時間かかる。そんな自分自身のマネタイズをどうしたらいいのかという質問がありました。それに対し「自主事業をはじめるなど手立てはある。なにかひとつのマーケットを貪欲につかみ取っていくといい。マネタイズの道は必ずある」と中島さんが答えました。

じもじょき.netの事務局の米澤さんは、おにぎり屋と焼き鳥屋さんを営みながら地元の女性の起業や生活の悩みに寄り添っています。千歳市は自衛隊の基地があるため、道外から移り住む自衛官とその家族が多い土地柄です。自衛官の多くが朝5時から夜の8時まで家を空けるため、子育てや家事が妻のワンオペになり、私なんて何もできない、とネガティブな感情を持つ人が多いのが現状です。
コロナ禍で実家に帰れず、たくさんの女性たちの心が塞がれている、と米澤さん。今後はいい人が多いという役所に困っていることを伝え、理解してもらい、打開するためのチームメンバーとして巻き込んでいこうと考えているそうです。
加藤さんは米澤さんのお話に、「納得しすぎて首もげそうです」と共感の想いを伝えていました。

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シンポジウムの最後に、皆さんが今思うことを伝えてくれました。

◆加藤さん
ないものはつくっていく。常にアップデートをする。
支援する側とされる側で価値観(ビジネスモデルキャンパス*)を書き合う。

*<補足>ビジネスモデルキャンパス(BMC)を書き合うとは?

BMCとは、提供価値や顧客、チャネル、コスト、収益などの項目を書き出し、全体像をつかむために有効なフレームワーク。
これを支援者と女性がペアになってお互いに聴き取る。
1ペア20分ずつ行い、どんどん支援者さんが席を入れ代わっていく。
最後は女性たちがよかったと思う支援者の隣の席に座りBMCの仕上げをする。
加藤さん「まさにBMCお見合い回転方式です。支援機関さんが鍛えられますよ」

◆寺田
このようなコミュニティを大切にしたい。
失敗をシェアできるような場が出てくるとおもしろい。
期待値は相手にも自分にも固定化させない。

◆中島さん
支援者もされる人も、一緒にワクワクしてなんぼ!
支援者も同じ方向を見て進めばみんなで楽しめるはず。
枠を超えて一緒にやることが大切。

今後はこの集まりを機に、皆さんでつながってさらに支援の力を高めていくようです。

寺田の話を聴いた参加者の方からは
「失敗をシェアできる場が出てくると面白い。そんな場は安心できる場でもあると感じました」
「お話はビジネスプランとして通づることころがありすごい!と思いました」と感想をいただきました。

社会の変化に柔軟に対応しながら、変化していく起業家支援のかたち。
弊社も引き続き志ある方のサポートに尽力していきます。

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◇菅原さん、加藤さん、中島さん、寺田の活動内容はこちらでご覧ください。

*菅原さん
北海道女性起業家支援ネットワーク<ほくじょき.net> 公式Facebook
https://www.facebook.com/1649832588640421/

*加藤さん
NPO法人bond place 公式サイト
https://www.bondplace.org/ 

*中島さん
サスティナブル・ストーリー株式会社 公式サイト
https://sstory.jp/corp/

*ポッドキャスト番組「寺田望のここだけ広報トーク」
https://anchor.fm/nozomiterada/episodes/4-e15b2kn