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コツを学んで即実践! はじめての書き方講座 レポート

2021.11.15

2021年11月4日、
「富士このみスタイル オンラインで学ぶ・つながる ワークシェア&スキルアップセミナー」
第3回目を開催しました。 講師は、編集者の日野なおみさん

『日経トレンディ』『日経ビジネス』などの雑誌から『すみません、ほぼ日の経営。』『宝くじで1億円当たった人の末路』『誰がアパレルを殺すのか』ほか多数の話題作を手がけてこられた書籍編集者である日野さんから、「はじめての書き方講座」と題し、仕事をするうえで役に立つ「書くスキル」と心持ちを学びました。
人と人をつなぐ、編集者の仕事内容もお話しいただきました。

日野さんは冒頭で、
「新型コロナウイルスが蔓延するようになって以来、『書く』仕事は、全国どこからでも仕事ができるなと感じていました。ですので、今日は参加者の皆さんがその一歩を踏み出せるようなところまでお話しさせていただければと思います」
と、ワクワクするメッセージを下さいました。

【今回のゴール】
❶「書く」の理解を深める
そもそも、「書く」とはどういうことなのか。
改めて定義し直し、整理していきます。
❷「書く」の最初の一歩を踏み出す
「書く」って意外と、ハードルが高くありません。

『書く』を中心に多彩に活躍されている日野さんが、ご自身の実体験に基づいて話してくださいました。
「今は書籍の編集者として『書く』『直す』の日々です。書籍の企画をしたり、発売後の書籍をプロモーションしたりしています。でも圧倒的に多いのが、『書く』と『直す』仕事です。
でも、実は、原稿そのものが「めちゃくちゃ上手」というわけでは、決してありません。苦手ではありませんが、いまだに書くのが好きとか得意と思うことはありません。
それでも『書く』『直す』を生業に、言葉を使った仕事に従事して20年弱になります」

【グループトーク❶】
「書くのが好きではない」という言葉に驚きです!
そこで、「なぜ日野さんが『書く』のが好きではないのに、この仕事を続けてこられたか」をお題として、アイスブレイクもかねてブレイクアウトルームで話してみました。
*皆さんの答え
・「人に何か伝えたい」という熱い気持ちがあったり、書くことを続けていたりする中で慣れてきたのでは。
・書く仕事をされていますが、話がお上手な印象を受けました。話をするようにお書きになったり、頭の中で整理されたりするのが得意なのでは。書くことにそこまで身構えなくてもいいのかなと感じました。

「皆さん、まさにこれから話そうとしていたことの『2つの柱』を伝えてくださいました。
入社して数年、私自身は書くのがすごく苦手で、私が来るとデスクがみんな嫌がる時期がありました。『また日野か。原稿直さなきゃいけない』と。それは私自身に苦手意識があったから。それが、3年目くらいでふっと抜けたときがありまして。この経験が今日お伝えすることのヒントになるのかなと思います」

●多くの人が「書く」に苦手意識をもっているようです
・うまく書けるか不安
・書き手のセンスが問われそう
それを証明するように、「書く」ための本はニッチなのにすごく売れています。
書くことに苦手意識を抱いたり、学ばないといけないと感じたりしている方が多いようです。

●私たちは毎日「書き物」を読んでいます
耳から入る情報や動画もありますが、新聞、チラシ、ニュース、メール・・・かなり書き言葉に囲まれて暮らしています。

●毎日読んでいる「文章」を、上手/下手と評価していますか?
→していません。単に情報として受け入れているのでは。なぜなら、情報が的確であることが一番大切だからです。

【「書く」には3種類あります】
(1)揺さぶる
小説やエッセイ、ノンフィクションなど、読者の心を揺さぶることが目的。喜怒哀楽などをよびさまして心を揺さぶります。
noteで文章を書かれている岸田奈美さんが感動的な文章を書かれています。いろんな事件が毎日いっぱい起きて、日々のことをつづっています。ただ、普通の人が揺さぶる内容を書くのは大変です。
(2)役立つ
雑誌やウェブの特集記事や書籍など、「役立つ」情報を伝えることが目的。学びを与えるものなども。
日野さんは日経トレンディ時代、読者に役立つ情報を伝え続けていたそうです。ネットの評価制度がない時期だったので、白物家電ボーナス商戦特集では食洗器のテストなどをやって結果を載せていました。
(3)伝える
必要な情報を的確に伝えることが目的。抜け漏れなく、正確に情報を伝えることが大切。
すべての情報の中で、(1)(2)に比べて圧倒的に多いです。新聞でもチラシでも、正確に事実を伝えることが大事です。

◆「書く」の難易度
伝える<役立つ<揺さぶる

◆社会的なニーズは
揺さぶる<役立つ<伝える
*普段接している情報は「伝える」。「揺さぶる」は嗜好品です。

◎「伝える」が「書く」の第一歩!
「最初から誰かの心を揺さぶろうとすると身構えてしまいます。自分の色を出す必要はありません。私が入社3年目くらいで苦手意識が抜けたのは、『自分』という意識を消した、つまり読者にどういった情報を伝えるかだけに集中したからだと思います。伝えたいことの優先順位が明確になってきて、そこから苦手意識が消えていきました。一番大切なのは、情報の媒介者になって、正確に伝えることです。
書き手の個性を出したり、独自の視点を出したりする必要はなく、取材や情報の中から必要なものをきちんと伝えていくのが第一歩です」と日野さん。

【「書く」を仕事にする】
●「書く」を仕事にする…ライターにはどうやってなれる?
肩書にライターと書いた名刺を作れば、なれます。資格不問、キャリア不問。本業でも副業でもOK。出版社の立場でいうと唯一必要なのは、「これまで何を書いてきたか」。
コロナ禍になってから顕著なのは、書く仕事は住む場所を問わないということ。取材もオンラインになってきているので、全国各地でライターが活躍しています。参入障壁としては低く、誰でも入れるのがいいところです。

●「ライター」と「編集」の違い
【発行元】どこに書くか。メディア・出版社・企業・自治体・団体など
メディアや出版社ならば、自社のサイトや雑誌などで特集やインタビューなどを掲載。企業や自治体、団体も最近は「オウンドメディア」という自分たちのメディアを運営。
【編集者】特集や記事の企画・取材依頼・交渉など
メディアや出版社ならば、特集や記事を企画し、取材先にアポイントを入れ、記事執筆や撮影などを担当。記事が世の中に出るまでの一切を差配。プロデューサー的存在。
【ライター】記事の執筆
主に編集者などからオファーを受けて、テーマに合わせた記事を執筆。編集者と一緒に取材に行くこともある。自分から企画を売り込むことも。
〈料理に例えると・・・〉
・取材先=料理の素材(新鮮野菜・お肉)
・ライター=料理人
・編集者=メニューや営業を考える戦略者。
*書く仕事、伝える仕事は多いわりにライターは少ない。
*大手メディアも編集者はいてもライターがいないという状況。

●「書く」を仕事にする最初の一歩は?
最初の「実績」、まずは「note」でOK。
〈例えばこんな内容で〉
・感動した本の要約
自分が読んで感動した本や映画の要約や感想文など
・イベントのまとめ記事
参加したオンラインイベント(対談や講演)のまとめ記事
・得意な分野のお役立ち情報
自分が詳しい分野のお役立ち情報
「お願いする立場からすると、その方がどんな文章を書くのかがわからないと不安です。最初から大手メディアに書いたことがあるのが実績でなくてOK。判断材料としてnoteは最適。売り込みも増えています」と日野さん。

●SNSを活用してみる
・自分が興味のあるインターネット上のコミュニティなどに参加する。
・自分がまとめたnoteの記事をTwitterなどで公開。
・「note」の記事などを書いたら、メディアや著者に@を付けてメンションするといい。著者や編集者が見る可能性は高い。
*取材依頼もTwitterのDMできたりする時代。ビジネス系ならリンクトインもおすすめ。
https://jp.linkedin.com/

「メディアの中の人たちは、ネットなどを通して、お仕事をお願いできるライターさんを探しているくらい、書く仕事はニーズが高まっています。音声メディアもありますが、最後は文字に残したいというニーズもあります。動画で1時間半のイベントを文字で読みたい需要もあります。
また、書く仕事は時間に拘束されないという利点もあります」と日野さん。

・寺田コメント
「私たちもオンラインセミナーの賑わいを伝えるために、グラレコ(グラフィックレコーディング)と詳細なレポートを残しています。これらはイベントにとって欠かせない存在となっています。富士は家族の転勤で移住してくる女性も多いので、手に職をと考えるときに、ライターの仕事は候補になると思います」

【グループトーク❷】

テーマ「もし第一歩を踏み出すなら、何からスタートする?」
*皆さんの答え
・まず、何を発信したらいいのかを考える(ヨガで学んだこと、家事のことなど)
・ライターは遠い世界の人だと思っていたが、お話を聞いて自分もやってみたいと感じた。
「今回のゴールが第一歩を踏み出すことなので、そう言っていただけて嬉しいです。ライターは遠い世界の人ではなく、主婦業をやりながらとか複業の人もいます。住んでいる場所も東京に限らないので、たくさん仕事があります。仕事のきっかけはどこから生まれるかわかりません。発信することが糸口になります」と日野さんからメッセージをいただきました。

 

【「書く」Tips】
●「書く」の大原則
実は、難しくありません。大切なのは、「読み手」の立場になること!
書き手の自分ともう一人「読み手」の自分を持つこと、これが一番大事です。
●「伝える」「役立つ」を最初に意識しよう
文章は、シンプルなほど読まれやすい。
情報を盛り込みすぎず、「整理」が大事。読者にとって何が必要で、何が役に立つのかを意識しましょう。「足し算」よりも「引き算」のイメージで。

◆Tips①― 主語と述語を明確に
主語と述語がズレているケースは多数。主語・述語を整理するだけで、すんなり頭に入ってくるようになります。

◆Tips②― 一文は、短くする
一文が長くなりすぎると、それだけで伝わりづらくなります。思い切って、一文40~50字で終わらせるイメージで訓練してみましょう。文章が長くなるなら、真ん中に「。」を置きましょう。

◆Tips③― 忘れてはいけない5W1H
「伝える」記事に必要なのが5W1H。誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように。

◆Tips④― 形容詞と副詞は減らす・・・感情が入ってくると増えやすい!
原稿を書いていると、つい増えるのが形容詞と副詞。執筆段階では推進力になることは間違いありません。けれど、多用しすぎると読みづらくなってしまいます。一度書いた原稿を読み返して、形容詞と副詞が多すぎるようなら減らしてみましょう。特に「伝える」「役立つ」の場合はすっきりします。

◆Tips⑤― 接続詞も減らす
形容詞と副詞と同じように増えるのが接続詞。「だが」「しかし」「さらに」「それも」などが多用されると、読みづらくなってしまいます。こちらも多いなら減らしましょう。

◆Tips⑥― スケルトン(骨組み)をつくる
いきなり書き始めるのではなく、まずは箇条書きでもいいのでどのような文章の構成になるか書き出してみる。設計図。とても大事!手書きでもパソコンでもOK。
原稿を書いている途中で迷子にならないので便利。

◆Tips⑦― 読者の立場で読み返す
原稿を書き上げたら、必ず読み返しましょう。この時のポイントが「書き手」の立場で読むのではなく、一旦頭を空っぽにして、「読者」の立場で読んでみること。書き上げた直後ではなく、一日置いて読んでみてもよい。ご家族に読んでもらっても。

◆Tips⑧― プロのワザを盗もう
第一線のプロフェッショナルがどのように仕事をしているのか。初心者にとっても役立つ情報が盛りだくさんです。
【参考書籍】
「聞く技術」―宮本恵理子著(日野さんも編集を担当)
「取材・執筆・推敲 書く人の教科書―古賀史健著

◆Tips⑨― 意識するのは変化とギャップ
何を書いたらいいのか分からない。そんなときは「変化」と「ギャップ」を気にしてみましょう。変化が起こったときに、ニュースや伝えるべきことが出てきます。「変化」や「ギャップ」があると人は興味を示します。

◆Tips⑩― 書き手の感動が原動力になる
変化やギャップ、驚きやおもしろい発見を見つけたときの「感動」を大切にしてください。原稿とは正直なもので、「伝える」「役立つ」という機能重視の文章であっても、書き手の温度感はなぜか伝達してきます。いつも豊かな感受性を育むようにしてください。

◆Tips⑪― 締め切りを守ろう
原稿は手を掛けるほどよくなります。だからといって、締め切りを超えるのはNG。記事が出るまでにはさまざまなプロが関わっています。原稿が上がってこないと進められません。クオリティよりも締め切りを守ることが重要です。

◆Tips⑫― 企画が立てられると仕事が増えていく
編集者に企画を提案できるライターさんは仕事がどんどん増えていきます。
原稿を書き、掲載する先のニーズを見ながら企画を提案できると尚よいです。

◆Tips⑬― 「書く」ことは幸せの量をふやすこと
書いて伝えることとは、幸せの量を増やすことでもあります。取材された人、それを手に取る読者、掲載する媒体、それによって変革する社会や企業・・・。
あなたにとって「書く」とは何かということを、考えてみると、きっとよりやりがいをもって書けるようになるはずです。

 

【質問タイム】
Q.書くときに感情が入ってしまうことがあるが、それは習うより慣れるもの?
A.感情は大事にしてください。心を揺さぶられた部分が原稿に反映されるとおもしろい読み物になります。ただ、ひとりよがりにならないように。自分の目線で書きながら、読者の立場にもなるなど、いったりきたりしながら書きましょう。まったく知らない人にどういう順序でどういうふうに伝えたらいいかを考えてみてください。

Q.読みにくい文章と読みやすい文章があります。その違いは?
A.「読みにくい文章」とは一文が長かったり、主語と述語がバラバラだったり、読み手側があれ?と考えてしまうものです。なるべく読み手に考えさせないで、すっと入ってくる文章がよいです。※後半で基本やテクニックをお伝えします

Q.営業の仕事をしている。コロナ禍で状況は厳しいが消費者には自分の書いたものを読んで前向きになってほしい。発信する際の味付けみたいなヒントがあれば教えてほしい。
A.情報発信の仕方がポイント。ただ、無理やり揺さぶるところまでもっていくより、そのものの魅力を「伝える」ことが大事です。コンテンツとして素晴らしいものをもっているなら、それをどう伝えるかです。人間は実利的な生き物なので、揺さぶる前に「役立つ」情報を提供しましょう。

Q. noteやSNSなどで発信する際、テーマを絞ったほうがよい?
A. 自分の気になったことでよいので、テーマは幅広くてOK。いろいろなテーマで書いていると、どういったものへの反応がよいかがわかってきます。トライ&エラーで、テーマでバズったバズらないがわかってきます。

Q. スケルトンを作る際のテンプレートや雛形みたいなものはありますか?
A. メモ帳に箇条書きでOKです。

Q. 日野さんが文章を書くときに最後まで読ませるために工夫していることがありますか?
A. 前振り(冒頭)を長くしすぎない。役立つことや、ギャップ、驚きを盛り込むこと。最後まで読み切る人は買った人の中で半分もいません。だからこそ編集者は1章、2章に力をかけています。本題に早く入っていきましょう。
書いた文章はすぐに仕事にすることをおすすめします。プロがリライトしてくれます。

Q. 読み手によって書き方は変えますか?ファンづくりのコツなどありますか?
A. 書き方は変えていっていいと思います。特にスタイルにこだわりがなければ試行錯誤しながらやってみましょう。
ファンづくりについては、SNSをうまく使い、読んで知ってもらう努力をするとよいでしょう。おのずとファンはついてきます。まずは出会いを増やしていくことが大事です。

Q.プロフィールには何を書いたらよいですか?
A.なるべくご自身のキャラクターがわかる経歴、書いてきた記事の内容などがわかるとよいです。例えば、移住者としての記事を書いてみるなど。
プロフィールから始まるきっかけづくりをしましょう。しっかり書いてあるとお願いするほうも安心します。

【参加者からの感想】
・今自分に必要なことはSNSの活用だということに気づけました。実際に行動したいと思います!
・ライターの仕事は難しいものだと思っていましたが、壁が低いことに驚きました。家でできるお仕事として、考えてみます。自分の視点より、読み手の視点。これからの発信を意識していきます。
・ライターの仕事を広げていきたいと思ったときに、どうすればいいのかと悩んでいたので、やれることはあることがわかってよかったです。また、最近うまく書こうと思いがちだったのが、基本の感覚に戻れた気がします。
・「書くことに個性はいらない、まずは伝えること」というお話に、気負うことなくハードルを下げてかくことができそうだと思いました。
・情報発信の仕方が勉強になりました。スケルトンを参考に文章を作ってみようと思います。