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富士このみスタイルワークシェア&スキルアップセミナー2020第3回【12.17/『復職・就職・起業・副業前に知っておきたいお金のはなし』レポート】

2020.12.25

2020 年 12 月 17 日(木)、
さくら税理士法人所属税理士でコトリスラボ創業アドバイザーの高林ゆか先生と、
夢を叶えるために、会社員からフリーランスになられたデザイナーの栗田舞子さんをお迎えして、
【前半】起業、復職、就職、副業時に必要なお金の知識を高林さんから学び
【後半】対談形式で栗田さんの体験談をお聞きしました。

参加者は、富士市に移住されてきた方を含む女性 13 名です。

本題に入る前に、参加される皆さんに高林先生、栗田さん、ビズホープ代表の寺田が加わり
4 グループに分かれてのアイスブレイクタイムが設けられました。

お題は「年末年始の過ごし方」です。
富士市に移住してきた方が多いため、いつもは実家に帰省しているけれど(コロナ禍で帰らない)…
という声が何人もの方から寄せられました。

なるべく外出をせずに、家族でボードゲームをしたりお子さまと家で楽しい時間を過ごしたいと
考えている方が多かったです。
今年はコロナ禍で確定申告が例年通りに進むのかわからず不安なので、年末年始の休みを利用して
早めに準備をしておきたいという声もあがりました。
余った時間を利用して参加動機を発表したグループもありました。

【講義前半】お金のはなし
人として生きていくために、なくてはならない大事なお金。
メインとなる生活のお金の他に、余力で自分を高めたり、教育のために使ったりするお金も必要に
なってきます。
起業前の方にアンケートをとると、共通して「起業したいけれど、損はしたくない」と
おっしゃいます。もちろんリスクも視野に含めてリターンを得ることで初めて仕事が成り立つ
のですが、できるだけリスクを減らしたほうが自分にとって痛手は少ない。
ではどうしたら損をしないで お金を管理していけるかという話に移っていきます。

●お金の出処をはっきりさせておく
【ポイント 1】 事業用の口座を作り、個人用の通帳からお金を引っ越す。
通帳を介することで記録が残る、初期投資の額がわかりやすくなるなどの効果があります。
何に使ったお金か忘れないように、内容を通帳に直接メモしておくと時間を損しないで済みます。

【ポイント 2】 借入は借主をはっきりさせておく。
夫や親など、他の人から応援してもらう場合、借りるという意思表示をきちんとする。
「〇〇に必要だから、〇〇円借ります。〇年〇月までに返します」など、
しっかりとした金銭消費貸借契約書でなくても、簡単な書類に内容をまとめるだけでも大丈夫です。
そして、身内に応援してもらう場合であれば、計画通りうまくいかない可能性があることも
伝えておきます。「借りたら返す」は鉄則ですが、必ず成功することばかりではないのが仕事。
「損しても良い範囲」をあら かじめ自分で決めておくことが大切です。

【ポイント 3】 生活用と仕事用、別々の財布を使って管理する。
現金を管理する際、生活のお金と仕事のお金が一緒になってしまいがち。
「記録がないので経費にできない」とならないように、その都度記録をとるようにしましょう。
生活用と仕事用のものを一緒に買ってしまった場合には、レシートごとに仕事分だけマーカーを引く
など区別して集計する。レシートがもらえない場合には、メモに「いつ、何処で、何を、いくらで」
と書き残します。

【まとめ】大切なのは、「他人が見てわかること」
自分がわかっているだけでは証拠になりません。現金の動きは記録をとらなければ、自分以外の誰にも
わからないのです。家計簿程度でも、記録や領収書・請求書を残しましょう。

〖ステップアップ〗 集計したものの結果を見る
集計することで、儲かっているか・いないのかを把握できます。
個人事業の場合、本人への給与は経費になりません。儲かったお金から自分の人件費が出せるか、
仕事をした分が返ってくる仕組みづくりができているのかを集計から把握できます。

◎お金の管理とは、自分の仕事を見つめ直す大事な作業
管理がキチンとできていれば、次の年も仕事としてやっていけます。

●手続きのはなし
専業主婦の方、働いている方。置かれている環境は人それぞれです。
どの程度仕事をするのか?どの程度収入を得られるのか?
シュミレーションをしつつ、自分の置かれている環境を再確認しましょう。

<夫の扶養を外れない範囲で働きたい専業主婦の方>
■知っておくべき 2つの壁
①103 万円の壁(税金の壁)
【妻】所得税が課税→夫の会社の家族手当がなくなる場合もある
【夫】配偶者控除がなくなる→収入に応じた段階的な「配偶者特別控除」になる
②130 万円の壁(社会保険の壁)
【妻】自分で国民健康保険と国民年金を納める
【夫】配偶者特別控除は 201.6万でなくなる→税金が増えて手取り給料が減る

パートの収入と所得税、住民税、社会保険、夫の社会保険の扶養家族適用の関係を表を使って
説明していただきました。
負担ばかりで大変だと思ってしまいますが、税金がなくなると困ってしまうのは私たちの
当たり前の生活です。
税金があるからこそ、水道をひねったら水も出ますし、泥棒が入ったら警察が来てくれます。
「みんなで使うものを、みんなで負担しあうのが税金です」と高林先生。
税金とは、社会の会費みたいなものだと表現されていました。

<働いている方(副業について)>
副業を始める前に、会社に確認をしましょう。副業 NO の会社が一般的なのが実情です。
マイナンバーで副業が発覚し、会社からペナルティを受けることもあります。
自分の夢や、やってみたいことがあれば会社に相談して理解してもらいましょう。
ただし、本業には影響の出ないように。 給与をもらっている方で、その他の所得の合計が20万円を
超える場合は税務署に申告をしましょう。20万円を超えない場合でも住民税の申告が必要な場合が
あります。自分の住んでいる市区町村のHP等で確認しましょう。

■青色申告?白色申告?(確定申告)
①初年度から黒字が無理という人…青色申告がおすすめ
・電子申告すると65万円まで控除ができる
(決まりに沿った帳面付けや電子申告などの要件を満たすことが必要)
・赤字を 3 年間繰り越せる・開業届けを出す際に申告する
②簡単な帳簿で良い人、開業届を出さないで申告している人…白色申告
・簡単な帳簿でOK
・65 万円の控除や赤字の繰り越しはなく、1 年ごとに税金を計算する
・簡単だがメリットは少ない

*20万円~30万円の売上が出るようになったり、利益が出るようなら
届け出をしておくことをお勧めします

◎おすすめはメリットが大きい青色申告
悩んだ時には、税務署の税理士や商工会の指導員など数字の専門家に相談を。
無料相談も実施しています。
<困ったときに参考するといいサイト>
・国税庁「タックスアンサー」(よくある税の質問)
・国税庁ホームページ「配偶者特別控除」

*わかりやすく解説している税理士さんのサイトもあるので、
検索して自分が理解しやすいページで勉強してみましょう

●情熱を忘れない
「何のためにこの仕事を選んだのか」
最初の気持ちを忘れない限り、どんな困難にも立ち向える
【仕事】とは、受けた以上完成しなければできたことにならない。そこに対し責任を取れるかが重要。
【夢を叶えられる人】とは、自己満足にならず、周りに迷惑をかけないように常に考えて行動が
できる人。家族にも一言アナウンスしておくといい。

◎情熱を忘れずに、自分の可能性を信じてチャレンジしていくことが夢の実現につながる

・‥‥……‥‥・‥‥……‥‥・・‥‥

【後半】栗田舞子さんのお話
2018年3月に個人事業主として起業した栗田さんは、WEBサイトや動画、デザインなどの制作や
SNS配信ディレクションもされていらっしゃいます。

◎開業時必要だったもの
・身分証明書(免許証など)・マイナンバーカード(通知カードでもOK)・印鑑
この 3つを持って税務署へ

◎開業後、必要になったもの(栗田さんの場合)
パソコン、プリンタ、名刺、印鑑、メールアドレス、個人事業主用口座、
写真付きマイナンバーカード、確定申告用ソフト、見積・請求書用ソフト、クレジットカードなど
その他:パソコンデスクと椅子、ホームページ、実印・印鑑証明、封筒、切手、プリント用紙、
書類送付用ハンコなどの事務用品
*職種によって変わりますので、ご参考までに

◎開業後の講習
税務署に開業届を出すと、 無料講習のお知らせなどが郵送で届くようになりました。
栗田さんはそれらの講習に参加して、分からないことを税務署の職員さんに直接質問して解決して
きました。白色の確定申告書類の書き方を教わり減価償却の計算方法の資料もいただけたそうです。
青色申告用の講習もあるので積極的に活用してくださいとアドバイスをいただきました。

◎栗田さんが困ったこと
【確定申告ソフトは使いやすいものを】
青色申告には確定申告ソフト(会計ソフト)がないと大変だと思います。ソフトは使用感、年間費用、
バックアップがとれるか、オンラインで使えるのか、スマホ対応しているのかなどメーカーによって
特徴が異なります。
使用感の合わないソフトはストレスがかかりますし、だからといってソフトの覚え直しも面倒です。
無料体験期間で必ずチェックをして早い段階で使いやすい確定申告ソフトを決めましょう。
【クレジットカードは開業前に作っておくと安心】
フリーランスになってしまうと、クレジットカードが作れなくなってしまったり、
分割払いができなくなったりすることもありますのでご注意ください。
【開業後は、家族の社会保険の扶養に入れないことも】
保険組合によってはフリーランスとして開業届を出している場合や初年度の確定申告後でないと
扶養に入れない場合があります。その場合、税金や保険料の負担が大きくなってしまいます。
各保険組合に事前に確認してください

《参加者からの質問①》現在使っている確定申告ソフト以外のものを人に勧められた。
やりやすいおススメのソフトがあれば教えてほしい。
《回答》すでに使われているのならばそのままでも。途中で変更するのはソフトが連動していない
ため最初からやり直しになってしまうので大変です。
事務局から補足 【確定申告ソフト(会計ソフト)例】 フリーランスでは無料のオンラインソフトを
使われている方もいらっしゃいます。

《参加者からの質問②》 書類はどのように管理していますか
《回答》 基本的にはクレジットカード決済。印刷したものを月毎にファイリングしています。
仕事の領収書は青色申告の場合は7年、(※前々年分所得が300万円以下の方は5年)の保存が義務。
→詳しくは(国税庁HP)
https://www.nta.go.jp/…/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm
報告が終わったらプラスチックのファイルに入れて保存しています。(栗田さん)
(高林先生から補足)
「税務署へは確定申告は電子申請もできるが、最後に印刷をして紙ベースでとっておいてください。
データ保管ができていればよいのですが、データ保管ができていない場合、
再度の出し直しが難しいので、きちんと保管しましょう」

◎フリーランスの仕事の流れ
①打ち合わせ→②見積り→③契約・発注→④納品→⑤請求・支払い
①お客様の情報・仕事の仕様・納期・担当箇所(グループの場合)などをヒアリング
②仕様に合わせた見積書を提出【事前に料金が決まっていない場合は自分で設定する。
どれくらい時間がかかるのか、同じ仕事の相場はいくらなのかしっかり調べる】
③仕事によっては発注書を発行していただいたり、お互いの契約書を交わす
④制作物を提出し、修正の後、OK がいただけたら納品
⑤見積書と同額(仕様変更があった場合は先方に確認)の請求書をお送りする。
【必ず後日入金 の確認を忘れずに!】
*企業によっては月末締の翌月末払いなど規定がありますので、
確認をして支払い期限を設定しましょう。

◎栗田さんがグループワークで気を付けていること
グループだからこそ気を付けないといけないことがある。
・納期は必ず守ること「報(告)・連(絡)・相(談)」は早めに
→困ったことがあったら、一人でかかえこまずに相談
・難しい仕事は一旦持ち帰る
→すぐに無理!と諦めないで、方法を考える。できないことを「できる!」と言ってしまっても
迷惑になるので、一旦持ち帰り、よく調べてお返事しています。
・チームメンバーへのリスペクトを忘れない
→みなさんプロフェッショナル。とても勉強になります。
・チーム内で盛り上がりすぎない
→お客様あってのお仕事、お客様の気持ちに寄り添い、お困りごとが無いか、
お客様に神経を集中するようにしています。

◎会社員時代と起業後のお金の管理グラフの変化
これまでの生活費、貯金、税金以外に、仕事で使用するパソコン・ネット代・
電気代(家事按分→働いた時間割で計算)ソフトウェア・事務用品などの経費が加わってくることが
わかりました。
(高林先生から補足)
「経費として計上するにあたり、仕事した時間を記録しておくこと。
根拠が示せると確実なものになります。電気のメーターを見て集計をとっている几帳面な方も
いらっしゃいます」

◎最後にお二人から心強いメッセージをいただきました

最初は、お金になるかどうか心配だと思います。フリーランスは楽ではないです。
プライベートな時間はほぼなくなるけれどやりがいはあります。
お客様に直接感謝されるし、自分の仕事が表に出る喜びがあります。
よくも悪くも濃い時間、フリーランスになってよかったです。(栗田さん)

この先、仕事を始めようと思ったときに理解があるのとないのとでは新しいことへの進め方が
違ってくると思います。コロナ禍の中で事業者さんの環境が大きく変わってきています。
生活の変化もあったと思いますが、その中でも思いがあってコロナ禍でも事業を始めようという方も
いらっしゃいます。 自分のためでも人のためでもあるのでやりたい、と意思表示をきちんとすることで
事業を仕事として進めていける。趣味ではなくて仕事でやっている人と見られたときが、事業者として
成り立ったときだと思います。皆様の夢の設計にお役立ていただけたらと思います。(高林先生)

受講生からの感想をご紹介します
・これからパートを始めようと思っていたのでとても役立ちそうです。
・扶養内にするかどうか悩んでいたのでわかりやすい表での説明は大変助かりました。
・実際に起業された方の苦労した点、気を付けていることなどのお話を聞くことができて、
とても良かったです。
・為になる内容で、とても参考になりました。
・実際にフリーランスになられてよかったというお言葉を聞くことが出来てポンと背中を
押してもらえたような気がします。

お金に関する不安がある、これからお仕事や起業をしたいと考えられて参加された皆様も
今回お話を聞くことでわからなかったことがクリアになって不安を取り除くことができたり、
これからのビジョンについて前向きに考えられるようになったのではないかと思います。

高林先生、栗田さん、貴重なお話をありがとうございました。