ブログ

ARUNの功能聡子さんが沼津西髙等学校で講話を行いました

2021.07.21

2021年7月15日(木)、途上国において社会的投資を行うARUN(アルン)合同会社代表の功能聡子さんが、静岡県立沼津西髙等学校のオンライン講話でSDGsの解説と自社の取り組みについて語りました。

学生の学習意欲を喚起し、多様な教育ニーズに応える普通科の有り方等を研究する静岡県「オンリーワン・ハイスクール事業」*のコーディネーターである弊社代表の寺田が、兼ねてからお付き合いのあった功能さんに講師を依頼したのがきっかけです。
*今年度よりNPO法人しずおか共育ネット代表理事の井上美千子さんとともに、コーディネーターとして事業の企画や運営を行っています。

沼津西髙等学校は当事業の「イノベーション・ハイスクール」指定校として、生徒が設定したオリジナルの探究活動を支援するカリキュラム研究を進めており、今回の講話はその一環として実施されました。

受講した生徒さんは、5クラス合計200人ほどの1年生の皆さんです。

SDGsの解説の前に、功能さんから新型コロナウイルスが世界に及ぼした、とてつもない数値を聞きました。
新たに9700万人が貧困に陥り、貧困ライン以下で暮らす子どもの総数は年末までに6億7,200万人に達する恐れがあります。児童労働に従事する子どもは20年ぶりに増加し、約1億6,000万人に。紛争や迫害、人権侵害などで居住地を離れた人々が2020年末時点で過去最高の8,240万人になりました」

持続可能な社会の実現のために、自分がどう変われるかが問われています

〈SDGsの5つのエッセンス〉
1.持続可能な開発
2.5つのP
3.誰ひとり取り残さない
4.バックキャスティング
5.イノベーション

5つのPとは、People(人間)、 Planet(地球)、 Partnership(パートナーシップ) 、Peace(平和)、 Prosperity(豊かさ)のこと。
この5つがあることで、持続可能な開発が可能になります。

課題があったときに、今の延長で改善策を考えるのではなく、どんな社会にしたいのかと未来の姿を想像して将来を考えるバックキャスティング』が大切だそうです。

〈ARUNとは〉
日本で初めて、途上国の起業家に対する社会的投資を始めた会社
〈ARUNのビジョン〉
地球上のどこに生まれた人も、ひとりひとりの才能を発揮できる社会
〈ARUNのミッション〉
途上国の人々のエンパワーメント機会の創出と参加型の社会的投資プラットフォームの構築

 

 

〈事例紹介〉
1.インドの酪農のIOT事業
酪農とIOTをつなげることで、問題が顕在化し、サプライチェーンのデジタル化やデジタルによる課題解決を進めた事業。
酪農事業者や農家には生産性、品質、製品ロスの減少による収益性向上、消費者にはより安全な製品が届くという社会的インパクトが評価されました。

「発掘し、投資と経営支援を行った末に、社会的インパクト評価を行う仕組みで、これを『インパクト投資』と定義しています」と功能さん。

〈インパクト投資〉
財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的および環境的インパクトを生み出すことを意図する投資。社会課題や環境問題を解決する技術やサービスを提供する企業に投資する手法で、社会的インパクトを評価する。

 

2.インドの家事労働者のマッチング事業
ITを活用した家事労働者の紹介サービスにより、女性が安心して働ける環境を提供し、人権に配慮した雇用を創出することで貧困削減に貢献。
女性の就業機会や収入が向上し、法的権利の保護や労働環境の改善につながり、さらには収入を子どもの教育費に使えるようになるといった社会的インパクトが評価されました。

ARUNの経営理念や事業紹介の動画を見たあとはワークの時間です。
事例の分析として、課題は何か、顧客は誰か、プロダクト・サービスは何か、社会的インパクトは何かを分析するワークを個人、グループの順に取り組みました。

ワークのあとに各クラス1人ずつ生徒から質問があり、功能さんが丁寧に応えてくださいました。

2030年までにSDGsは目標を達成できるのか」という問いには「ごくいい質問。SDGsはゴール、ではなくマイルストーン(中間目標地点や節目のポイント地点)。SDGsは途中経過でもある、指標みたいなものなんです。私たちが力を合わせて、達成したあともその先に進むのが大切。そのためには、自分自身でいること。楽しみながらやりたいことを実現していってください」と生徒たちの背中を押してくださいました。

約50分間、教室の黒板に映し出された功能さんのプレゼンテーションに前のめりになって耳を傾け、悩みながらも熱心にワークに取り組み、意見や感想をクラスの仲間と共有していた生徒の皆さん。
講話終了後のアンケートには、こんな感想をつづってくれました。(一部抜粋)

・SDGsとの向き合い方
「今までSDGsについて具体的に何をやればいいのかわからない、難しそうと感じていましたが、これからは身近なところから少しずつ取り組んでいこうと思います」
「2030年僕は25歳なので、SDGsを身近に考え、僕たちが主役である時代を自分たちで作っていきたいです」
「SDGsの達成には、国連や政府だけでなく民間の力も必要だということがとても印象に残っています」

・自分ごととして
「私は自分で考える前になんでも人に聞いてしまう癖があるのですが、お話を聞いて自分で考えなければなにも始まらないことを学びました」
「グループで話したときに、いろいろな意見が聞けて、あーなるほど!と思ったことがたくさんあったのでとても良い時間でした」

・これからのことなど
「ARUNという団体の具体的な活動を教えていただけたことで、表面的なことではない革新に迫った世界の問題を知ることができました」
「自分の得意な英語を将来生かしてなにかできたらいいなと思います」
「これから沼津活性化プロジェクトを行うにあたって、この講座で学んだことを生かしながら沼津をよりよくしていきたい」

* * *

講話終了後は、校長先生や副校長先生をはじめとした教員の方々8名との懇談会の時間を設けました。

先生方からの「質問力をあげるにはどうしたらいいか」「SDGsは規模が大きすぎる。どこから取り組めばいいのか」などの質問に、「インドの支援の話はグローバルだがやっていることは実はローカルなこと」「まずは先生自身がワクワクしてそれを生徒たちと共有することからはじめたらいいのでは」と功能さんは答えます。先生方にもバックキャスティングという発想法で物事を考えることを勧めていました。

ある先生からは「生徒たちにとって社会で活躍する大人とつながる貴重な機会となり、日頃の授業では感じられない大きな刺激を受けていたようです。沼津市活性化プロジェクトを進めるにあたり、課題解決を考えるきっかけを作ることができました。功能さんに生徒の成果を紹介できるように頑張らせたいです」と感想をいただきました。

寺田がコーディネーター役の任務を通じて感じたのは「コーディネーター人財には、単に教育方面で知見があるというだけでなくバウンダリースパナー(境界連結者、越境人財)の要素が多分に必要となる」ということです。

これからもコーディネーターとして、学校を客観的に見る視点を持ち、多様な人財を介して学校と地域の接点をつなげていきます。

* * *

●ARUNでは、CFO(chief future officer)を募集しています。
活動に参加・支援する法人、個人、インターンも募集中だそうです。
ご興味のある方は、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。
https://arunseed.jp/

SDGsについて、基本から理解を深めたい方におすすめです。
●功能さんご監修の本
60分でわかる! SDGs 超入門
https://amzn.to/3hUBCPw

「すべての中高生が自らのポテンシャルに気づき、個性と能力を発揮できる社会の実現」を目指し、「中高生に多様な価値観・出会い・挑戦の機会を提供する」ことをミッションに掲げる団体です。
●NPO法人しずおか共育ネット(代表理事:井上美千子さん)
https://shizuokakyouiku-net.localinfo.jp/