むすびサロン2019 第3回【10.23/本では教えてくれない クリエイティブな企画のつくりかた】レポート
2019.10.25
10月23日(水)、2019年度むすびサロンスキルアップ講座の第3回目が三島市商工会議所で開かれ
23人の働く女性(育休中の方含む)が受講しました。
講師はクックパッド株式会社コーポレートブランディング部長、
クリエイティブクッキングバトル代表の横尾 祐介さん。
大手下着メーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社で複数のブランドマネージャーを歴任した経験をお持ちの横尾さん。
当時、誰もが知る飲料ブランドを売り続ける某外資系企業でのキャリアを持つ上司から、
マーケティング戦略の基礎を徹底的に学びます。
そしてその後、コンフォート下着ブームの先駆けとなった「スロギー」の大ヒットを巻き起こしました。
綿密に行ったマーケティング成果の表れでした。
現在はクックパッド株式会社にて、
フードロスの解消をテーマに残り食材を工夫して自由に料理する能力に焦点を当てたイベント「クリエイティブクッキングバトル」の代表を務めています。
ラフなファッションと軽妙な語り口で受講生をあっという間に引き付けた横尾さん。
今年度のむすびサロンの最終ゴール「三島の社会的な新しいおみやげを作る」の企画立案時に活かせる、
本では教えてくれない クリエイティブな企画のつくりかたを順に解説してくださいました。
* * *
◎気持ちの良いコミュニケーション
=相手にとって価値のあるボール(情報)を投げること
おもむろにピンクのボールを取り出して、
受講者のおひとりとキャッチボールをはじめた横尾さん。
対話をしながらボールを投げ合い、
会話が成り立つ「気持ちの良いコミュニケーション」の様子を見せてくれました。
これに対し、「気持ち悪いコミュニケーション」は
相手の反応を無視して一方的に言葉を投げ続けること。
「相手が大切な人だと気を遣うので気持ちよくできるのに、
仕事になるとできない人が多い」と横尾さん。
コミュニケーションがうまくいかない要因は、
相手が誰なのか見えていないこと。
何かを伝えたいとき、相手にとって価値のあるボールでないと受け取ってもらえません。
「しっかりと相手のボールを作って投げていきましょう。
相手を特定して、理解して、ずばりと切り込むこと!」
これが今日のマーケティングのテーマです。
◆マーケティングの基礎《1》基本構造
◎マーケティングとは
「価値を生み出す仕しくみ」
つまりアイディアを生み、それが伝わり、そして必要とされる(売れる)こと。
マーケティングの基礎を学ぶと、
①企画が失敗しにくくなり、
②誰かに説明する際に説得しやすくなります。
世の中や自分の状況の理解があるうえで、
「Who誰に?(ターゲット)」→
「What何を?(なにかいいこと)」→
「Howどうやって届ける?(伝え方)」
という順で成り立っています。
これをデートでのアプローチに例えてみると…
「Who誰に?(相手の性格・趣味)」→
「What何を?(自分の長所)」→
「Howどうやって届ける?(企画・エピソード)」
となります。
◇マーケティングの結果、ヒットに結び付いた事例4つ
①シェア3位で伸び悩んでいた某洗濯用洗剤
「Who誰に?(洗剤なんてどれも一緒と思っている主婦)」→
「What何を?(白く洗い上げる・部屋干ししても臭わない)」→
「Howどうやって届ける?(除菌推し・梅雨対策・TV広告)」
② シェア2位で伸び悩んでいた某スポーツドリンク
「Who誰に?(水のほうが体にいいと思っている母親)」→
「What何を?(脱水症状予防には水よりスポーツ飲料)」→
「Howどうやって届ける?(夏・熱中症対策ニュース)」
③ ワイヤーブラの不振などに悩んでいた某下着メーカー
「Who誰に?(ワイヤーブラは大事と思うきちんとアラサー)」→
「What何を?(付け心地ゼロ・オフタイムが充実する)」→
「Howどうやって届ける?(きちんと感と状況を説明する広告)」
④ 真面目で堅いイメージの食料廃棄(food waste:フードウェイスト)の啓発をしたい
クックパッド株式会社
「Who誰に?(食品ロスは知っているけど興味のない会社員)」→
「What何を?(料理でチーム対抗・運動会形式)」→
「Howどうやって届ける?(大手企業40社によるクリエイティブNo.1選手権)」
⇒「クリエイティブクッキングバトル」が実現!
◎重要ポイント
「自分のメガネを外してみる」
普段私たちは、自分の歴史で彩られた色メガネを通して世界を見ています。
でも、つくる企画は他の誰かに届けたいもの。
そこで私たちが先ずするべきことは、自分のメガネを外すこと。
フラットに、広い視野で、全体を俯瞰して状況を把握することがとても大切です。
良いか悪いかを判断するのではなく、
ありのままの事実を整理して状況を把握することで、
理解の漏れが減り、チャンスのありかを見極める確率が上がります。
◆マーケティングの基礎《2》4C
◎マーケティング4Cとは
購買者の立場から見たマーケティングの視点。
生活者(Consumer)、カテゴリ(Category)、
競合(Competitor)、自ブランド(Company)の4つ。
講義では、配られた4C記入シートに向かい、
三島の社会的な新しいお土産を作るために必要な視点を書き込むワークを行いました。
◆マーケティングの基礎《3》ターゲットとインサイト
何かを売りたい、伝えたい私たちが、一番知りたいことは、
「獲得すべきターゲットは誰なのか、何をしたら行動してくれるのか」
ということ。
◎マーケティングの成功には
「ターゲット設定」と「インサイト発掘」が最重要!
インサイトとは、
消費者の既存の概念を変え、潜在的なニーズを引き出すきっかけのこと。
私たちは日々、タテマエとホンネのせめぎ合いの中で暮らしています。
そのホンネの更に下にいるのが「インサイト」。
(ちなみにインサイトの下には本人も気づかない深層心理があります)
つまりインサイトとは、
言語化していない、もやっと考えていることで
言われてみると「そうだ!」と思える気づきのこと。
◇インサイトを発掘して成功したマーケティング事例4つ
①女性の集客に悩んでいた某ファストフード会社
タテマエ:私はヘルシー志向だからサラダが食べたい
ホンネ:本当はハンバーガーが大好きだから食べたい
インサイト:たまには分厚いハンバーガーが食べたい
→分厚いハンバーガーがヒット!
②女性客の獲得に悩んでいた某カメラ会社
タテマエ:軽くて小さい一眼レフでおしゃれな写真を撮りたい
ホンネ:一眼レフの優れた画質の写真が撮りたい
インサイト:手前にピントが合って背景がボケるいい感じの写真が撮りたい
→インサイトが実現できるカメラがヒット!
ターゲット設定とインサイト発掘に必要なのは、細やかな分析や調査です。
①データ分析に基づいたターゲットの絞り込み
②ターゲットへのインタビュー
③インタビュー後の再調査
このような流れでしっかりと調査を進めます。
◆マーケティングの基礎《4》コンセプトをつくる
◎コンセプトは、
目標を達成するためにアイディアを売り込むとき、
あるいはアイディアを生み出すときに使います。
「Who(消費者の私に)」→
「What(まだ満たされていない何かを)」→
「How(満たしてくれるもの)」
という欲求に答えてくれるもの。
ここで受講者が取り組んだのが「コンセプトフォーマット」。
書き込んでいくと自然にコンセプトが浮かび上がります。
「Who」(ターゲット・顕在潜在ニーズ・インサイト)
________なあなたへ
________に不満・困っていませんか?
or________があればいいなと思いませんか?
「What」(ベネフィット・裏付け)
この【企画名】は________ができます。
「How」(裏付け)
その秘密は_________にあります。
「What」(エンドベネフィット)
これで_________なライフスタイルを過ごすことができます。
*マーケティングにおける「ベネフィット」とは
商品やサービスそのものではなく、
「その商品を使用することによってもたらされる良い効果」のこと。
多くの企業がこのフォーマットを利用して企画立案の土台を作っているそうです。
◎コンセプトづくりの注意点
①新規客向けか、既存顧客向けか優先順位を決める!
②インサイト(あるあるネタor目から鱗)を理解しておく
③ベネフィットの強弱を把握しておく
〈強〉ベネフィットに新規性がある
〈中〉新規性はないが、優位性がある(技術、お墨付きなど)
〈弱〉新規性も優位性もないが、信憑性がある(同上)
〈終〉新規性も優位性も、信憑性もない
④最終確認を怠らない
ターゲットにとってベネフィットや裏付けがあいまいになることが多いのが現実です。
わかりやすさ・ユニークさ・信頼感・共感を得られるような企画を目指しましょう!
最後に横尾さんが「これは遺言です」と前置きして伝えてくれた言葉です。
「愛情をあるものを広めよう、つくろうとする人は、自分のメガネで見てしまいがち。
三島愛の深い皆さんが、これから三島のお土産をつくるとき、
三島の魅力(と思っていること)を全面に押し出すことが、相手にとって良いこととは限りません。
三島に来る人は、三島に全然興味がないかもしれません。
そんな人にどう伝えるか。
多分そこにヒントがあると思います」
受講生の皆さんの心に、この「遺言」はどのように印象付けられたのでしょうか。
今回の濃厚な学びが次回からの企画立案にいかに役立っていくのか、期待は膨らむばかりです!
(写真:講義終了後の記念撮影)
いただいたアンケートの一部ご紹介します。
・マーケティングという新しい世界を知ることができた。
・今までモノ作りに興味がなかったが、講座に参加して一からモノを作るという意味を考え学ぶことができて良かった。
・普段アイディアを出す時には考えないポイントについて知ることができたので、参考になりました。
・企画を考える機会はあるが、その方法を教えてもらったことはなかったので今後仕事をする上で参考になります。
・自分の意見を通すのではなく、相手が何を求めているかを情報として知ることが大切だということが分かりました。
(写真:受講生のかわいいお子さんたち)
(写真:講義終了後、源兵衛川を散策する横尾さん)
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次回のむすびサロンは11月20日。
(11月6日には津田大介さんと浜田敬子さんによるオープン講座も開きます)
有限会社サンディオス代表取締役の津賀由布子さんをファシリテーターにお迎えし、
「三島の社会的な新しいおみやげをつくる」セミナー&実践型ワークショップを開催します。
いよいよむすびサロンも終盤に入りました。
受講予定の皆さま、横尾さんからの学びを復習し、
メンバーと一緒に楽しみ、切磋琢磨しながら企画をつくっていきましょう!