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新規事業や業務改善のヒントになる「これからの経営に活きる 外部人財の活かし方」レポート

2022.02.10

1月26日、
「富士このみスタイル 経営者・人事担当者向けオンラインセミナー」を開催しました。

講師は株式会社チームボックスの中竹竜二さん

テーマ「これからの企業としての成長の秘訣」と題し、ご講演いただきました。
セミナー後半では富士市より、富士このみスタイルの取り組みと、ワークシェアに挑戦する先行事例を紹介しました。
現在「お試しワークシェア」にご協力いただいている企業様や、ワーカー兼ディレクターとして活躍中の方によるお話もありました。

中竹竜二さんは、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を経て、ラグビーU20日本代表ヘッドコーチを3期にわたって務めたスペシャリスト。また、ラグビーだけでなく、企業のリーダー育成トレーニングを行う会社やコーチの学びの場を促進する団体を設立するなど、ジャンルを超えて人を導いてこられた方です。

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今回の講演のテーマに対し、中竹さんは言います。

「結論から言うと、この答えは『開かれた文化/オープンカルチャー』だと考えています。「開かれた文化」のためには『笑顔』『反応』『正直』の3つの心がけが必要です」

〈中竹さんからの質問〉
「今日のセミナーへの期待は何ですか?」

参加者の答えを受けて中竹さんは、「期待とは未来を先にイメージすること」と伝えます。
「これは成長する企業の秘訣と結びつきますが、実現していないことを言語化するのは難しいんです。でも、過去が現在に影響を与えるように未来も現在に影響を与えます(ニーチェ)。例えば、読書にどんな期待をしているかを言語化できるかによって、本から受け取れる量が変わります。スポーツ選手も、練習に対する自分への期待、チームへの期待を言語化すると効率が変わります」と期待を言語化することの意義を教えてくだいました。

「成功している人は、自分の向き・不向きではなく、自分がやりたいかどうかで動いている」そうです。
「まずは考え方を前向きにして自分の行動を良くすること、それと同時に自分のいる組織がどうしたら成長できるのかという“適切な問い”をもってほしい。大事なのは、唯一正しい解を探さず、自分なりの解を見つけることです」

これからの組織マネジメントにおいて重要な「関係性」については「勝ちぐせを持たないチームは監督と選手が1対1。勝ちぐせのあるチームは全員が全員とつながっている状態。自分以外のメンバーがきちんと連携できていることが大事」とし、メンバーが自分らしくオープンでいられ、全員と連携できている状態が望ましいと話しました。

最後に、参加者から「今、“信用の時代”から“信頼の時代”へ変わっていきています。どちらを重視したらよいでしょうか」と質問がありました。
「問題が起きないように全力を尽くす減点法の信用ベースの組織では、イノベーションは起きません(ただ、インフラ・金融系などは信用もかなり重要)。どんな問題でも解決に全力を注ぎ、新しいこと、チャレンジングなことに手を出せる信頼ベースの組織が望ましいです。つまり、これがオープンなカルチャーにつながる。そのために、笑顔、反応、正直に話すこと、そして自らをさらけ出し、相手を傾聴し承認することが大事。時々立ち止まって考えてみましょう」と、企業の成長のための秘訣をまとめてくださいました。

続いて、富士市から富士このみスタイルの取り組みと、ワークシェアに挑戦する先行事例を紹介しました。

1.SDGsと富士このみスタイル
富士市は2020年7月に 「SDGs未来都市」に選定されました。
目指す将来を「富士山とともに輝く未来を拓くまち ふじ」としてオール富士市でのSDGs達成に取り組んでいます。
未来都市の選定に当たり国に提出した提案書には「富士このみスタイル」の取り組みも含まれています。
2019年にスタートした富士市独自の地方創生事業で「移住定住の受け皿作り」というのが正式な事業名称で、「富士このみスタイル」が愛称です。
この事業は移住者の増加を目指すことが主目的ではなく、女性活躍や働きがい、住み続けられるまちに寄与する取り組みを官民によるパートナーシップで実現しようとするもので、移住しやすい環境整備を行う移住定住の受け皿をつくるというものです。SDGsを原動力とした地方創生や地域活性化を図る取り組みということで「SDGs未来都市」を構成する取り組みの一つになっています。

2.富士このみスタイル取り組みの背景
全国的に地方では人口減少が進んでいます。富士市でも例外ではなくて若い世代の人口流出が大きな課題となっています。
一方で最近はコロナの影響で勤務先は変えずに住む場所を見直そうという人が増え、地方への移住に関心が高まっています。
富士市では若い女性の減少が著しく、「女性の転入と転出の動き」に注目したところ、大学進学や就職、結婚や子育てなどのライフイベントごとに動きがあることが分かりました。そこで、結婚や子育て世代の方の移住定住に特に注目することになったのです。

◆結婚や子育て世代の女性が抱える富士市への移住の課題(過去の意見から集約)
①移住してから地域に溶け込めるかが不安
②希望する働き方や暮らし方ができるのか不安
③富士市の魅力や知りたい情報が不足している
これらの課題に取り組むのが、富士市に移住した人とこれから移住する人を応援する企画「富士このみスタイル」です。
①移住定住者の応援・支援体制づくり
・セミナー、ワークショップ、お話し会などの各種イベントを開催
・企業様と連携協力体制を構築(移住定住応援団登録制度)
②首都圏に向けた移住促進PR
・オンライン移住相談会「富士市DAY」における富士このみスタイル参加者のゲスト出演
・フェイスブックやウェブニュースへのプレスリリース動画、リーフレット等
③柔軟な働き方・ワークシェアの推進
それぞれにスキルや特性をもった仲間と仕事をシェアして働く「ワークシェア」
…子育てと両立しながら、ライフスタイルに合わせて自分のペースで働ける柔軟性が特徴
〈取り組みや他移住支援事業の結果〉
富士市は移住者数が平成30年後と令和元年度は県内で1位、2年度は2位に。
本年度も昨年度を上回るペースで移住者が増えています。

◆富士市が目指すこと
移住者の増加も大事ですが、「移住のイメージアップによる移住定住希望者の増加」と「移住後の希望の実現や不安の解消による移住定住者の満足度の向上」が目標です。
当事業が移住者のコミュニティーづくりのきっかけとなり、新しい土地で新しいライフスタイルを歩み出すはじめの一歩となればと考えています。
3.ワークシェアについて
外部人材の活用という視点でみると、現在スキルやモノのシェアによるシェアリングエコノミーやクラウド上でアウトソーシングを行う事業が顕在化しています。
一方、富士市がワークシェアにローカルで取り組む理由は
「地方で地元を元気にする、地方創生のため」なのです。

◆キーワードは、Well-being
ワークシェアを単なる外部委託や就労支援のために普及するのではなく、発注者やワーカーさんみんなを巻き込んでの好循環を生み出す仕掛けとなって、持続的な幸せである
【Well-being(ウェルビーイング:心身にも、社会的にも、すべてが満たされた状態にあること) 】を作り出す原動力としていきたいという思いで取り組んでいます。

◆外部人材活用のメリット
地方創生に必要とされる視点3つに注目し、移住定住政策の柱にワークシェアを取り入れて取り組んでいます。
①地域の人材を地域で活用すること
②地域のお金が地域で循環すること
③瀬在的な力が女性の活躍を後押しすること

◆基本的なワークシェアのスキーム
1.企業や行政(依頼主)による仕事の受注
2.ディレクターがワーカーに仕事を振り分け→取りまとめ→依頼主に納品する
仕事をシェアすることで時間や場所の融通が利くため、子育て世代でも取り組みやすいのが特長です。
ワークシェアの導入にはこれまで3年間取り組んできました。
1年目は市民や企業の皆さんに提案を行い、2年目からはワークシェアの仕組みについて具体的な検討をはじめ、本年度中にまとめていく予定です。
現在、ワークシェアの実践に必要なマニュアル作成などに組んでいるところです。

4.お試しワークシェアについて
ワークシェアを体験する「お試しワークシェア」を昨年度から行っています。
富士このみスタイルのイベントの参加者10名の方が体験しました。
内容は「オンラインセミナーの運営補助」「移住定住応援団募集チラシの作成」「移住希望者向けのリーフレットの作成」等です。
本年度は、移住定住応援団に登録企業の3社様から仕事をご依頼いただきました。
現在11人の方が3つのチームにわかれ取り組んでいます。
❶お庭プラス吉村庭園様
モニタリング調査(女性客がチラシやインスタなどに興味を持ってくれるための対策について意見を伺う)
❷LivingD第一建設様
WEBライティング業務(依頼企業運営のWEBサイトに掲載するブログ原稿を作成する)
❸静岡ガス エネリアショールーム富士様
「富士このみスタイル食堂」運営(エネリア食堂のチャレンジ出店に向け料理人と協力し企画運営を行う)※コロナの影響で開店延期中

5.ワークシェアのメリット
◎ワーカーにとっての利点
・参加者の特性レベルに応じて関われるので、安心感や満足感、達成感が得られる
・チーム制で対応するので、チーム内で融通し合い時間調整もできて柔軟に働ける
・特別なスキルがなくても参加可能
◎企業にとっての利点
・マンネリ化している商品やサービスに変化を取り入れることができる
・人材不足で手つかずの業務に取りかかることができる
・男性だけの職場では、新たに女性ならではの感性を取り入れることができる
・社内にはない新しい視点を取り入れることができる
・子育て応援や女性の活躍、SDGsの達成に間接的に関わるので社会貢献につながる

6.最後に、富士市企画課より
「ワークシェアは潜在的な女性の力を呼び起こすことができます。
地方を元気にする歯車の一つとして少しずつ回り始めましたので、引き続き温かく見守っていただけると幸いです。来年度から本格的にワークシェアが始動します。仕事の創出にご協力ください」

◆ご協力いただいた企業様からのコメント
●LivingD 第一建設様
手探りでしたので、期日に余裕のある移住者・県外の移住検討者向けのウェブサイトでのライティングをお仕事としてお願いしました。
富士このみスタイルの趣旨に、仕事内容はすごく合っていたと思います。お願いするにあたっても、市の方や運営事業者の方にサポートしてもらいながらでしたので、特段大変だったことはなかったです。
実際に移住してきた方が書いてくださったので、読み手に伝わりやすいのではないかと期待しています。
●静岡ガス エネリアショールーム富士様
エリアショールームの中にある食堂は、「地域の皆様にチャレンジをしていただく起業支援型食堂」がコンセプトですので、お話を受けたときにはぜひともこの食堂を使っていただきたいと考えました。富士このみスタイルの皆様方が元気になれば、きっと富士の街も元気になるのではないかと思っています。
富士このみスタイルの皆様が当食堂を使っていただければ、私たちも皆様とつながりが持てます。そしてこの食堂を使っていただく方が増えていけば、さらに富士市も盛り上がるのではと期待しています。
ガス会社というと「信頼」よりも「信用」のほうが強いのですが、皆様の様々なアイディアをもらいながら、「信頼」の取り組みも積極的にできればと考えています。
続いて、昨年度からお試しワークシェアに積極的に参加し、第一建設様のブログをライターさんと一緒に書いてくださったディレクターの山口さんにひとこと感想をいただきました。
「働くことへの不安はありましたが、この経験を通じてみんなが成長できるということを実感しました。他の方たちにも体験して、実感してほしいと思っています」と山口さん。
最後に、講師の中竹様よりエールをいただきました。
「地域の施策なのでいろいろな意見はあると思いますが、やるべき、やったほうがいいという声よりも、むしろ、やっている方たちが楽しいなと思えることが大事だと思っています。様々な障害もあるかと思いますが、逆にそれを楽しんでいって頂ければと思っています。」
中竹様、ありがとうございました!

〈参加者の方から中竹さんへの質問〉
Q.自分とチーム員との関係性よりもチーム員同士の関係性が大切と聞きました。どのようにそれを見るのでしょうか?
A.自分がいない場でつながる機会をつくっていくことがまず大事です。
例えば、スポーツチームで言えば選手だけに任せてそこからいなくなる、会社でも完全に委譲とか委任するということです。
信じて任せてみること。終わった後に話を聞いて、ちゃんと議論になっていたか、楽しかったかなどをチェックしましょう。ただほっておいても場づくりが生まれないので、何かの課題を設けて委任するのがいいかと思います。

〈参加者の皆様からの感想〉(一部抜粋)
・組織におけるマインドセット、仲間づくりを学びたいと思って参加しました。問いの重要性、そして自分なりの解を持つことの大切さを強く感じました。今後の対話において、あなたは何をしたいのか?の問いを大切にしたいと思います。より良い社会を作るために、自分で解を持ち、行動できる人材をもっともっと増やしていきたい、その推進を担いたい、と思いました。
・「信用ベースの組織と信頼ベースの組織」、傾聴、承認を心掛け、お互いに目を配り協力し合うより良いチームつくりを行ってまいります。
・非常に参考になる内容で、学びが盛りだくさんでした。各自が使命を同じくし、責任感持って、自律的に動くティール組織が理想的だと思っていますが、そういう組織の形を長期的に続けていくのは難しく、短期プロジェクトに向いているのかな、とも感じています。